アンティークシルバーの奥深さ!イギリス銀食器のホールマーク(刻印)について

アンティークシルバーを語るには外せないのが【ホールマーク】です。

(ホールマークとは銀食器に打刻されている【小さな刻印】のこと。)

特にヨーロッパの銀食器文化の中心であったイギリスの【ホールマーク】は世界的に最も古く、最も信頼のおける銀・シルバーの品質保証制度として知られています。

【イギリス銀食器のホールマークから何が分かるのか?】

  • 製品の金属素材の証明・・・純銀なのか、シルバープレート(銀メッキ)なのか。銀純度(スターリングシルバー925/1000、ブリタニアシルバー958.4/1000)も判別できる。
  • どの銀工房・メーカーで製造されたのか。
  • どこの都市で製造・(鑑定)された製品か。
  • 製造年は何年か。(鑑定された年)
「マッピンウエッブ社」「シェフィールド」 「1920年」に刻印 された「スターリングシリルバー製」と読み取れます。

つまり、その銀食器の価値を証明する重要な情報が【ホールマーク】から読み取ることができます。

この【ホールマーク】の解読も非常に奥深く、アンティークシルバーに はまってしまう大きな理由の一つではないでしょうか。

今回はイギリスのアンティークシルバー 銀食器のホールマーク(刻印)の読み解き方についてご紹介していきます!

目次

イギリス銀食器 ホールマークの歴史

中世ヨーロッパの歴史の中で王侯貴族社会を中心に、発展してきた銀食器文化ですが、古くはローマ時代から銀 シルバーは希少な金属として価値を認められてきました。

銀品位の規格基準の始まりは12世紀 

イギリスでは12世紀から銀の取引についての取引法が定められるようになります。

1238年 ヘンリーⅢ世により、初めて金銀製品の基準を定める試みが行われました。

1300年にはヘンリーⅢ世の長男であるエドワードⅠ世により、今も世界の主流となる【スターリングシルバー】(銀純度92.5% 925/1000)の銀食器の使用が制定されました。

スターリングシルバーの由来

世界的に今も銀品位の主流となる【スターリングシルバー】の基準が定められたのもイギリス発祥となります。

(イギリスが今も続く銀文化の基礎を作ったんですね!)

それは 初代英国王ヘンリーⅡ世(1154年~1189年)の時代 12世紀にまでさかのぼります。

当時、イギリスの銀貨の鋳造を担うようになった東ドイツの鋳造家Easterlingスターリングが、イギリスの貨幣鋳造を指導し、その時に定めた銀品位(銀純度92.5% 925/1000)がSTERLINGスターリングとよばれるようになりました。 

これより1920年までイギリスの銀貨は銀品位92.5%のスターリングシルバーが使われるようになります。

これには実用性も含まれる理由がありました。

銀は純銀100.0%では硬度がとても柔らかく、強度面では実用に適さない部分があります。

銅などを割り金することで「銀食器に適した硬度を確保する」という、利にかなった銀純度といえます。

ホールマークHall Markの言葉の由来

世界的に認知されている【ホールマークHall Mark】という言葉ですが、

 1327年にイギリス国内で初めてアセイオフィス(金銀 貴金属鑑定機関)として認められたロンドンの「ゴールドスミスズカンパニー(The GOLDSMITHS’ Company)」に由来します。

LONDON ゴールドスミスホール

ホールマークは直訳すると「会館 屋敷(hall)の印(mark)ですが、

このロンドンの The GOLDSMITHS’ Company の施設【ゴールドスミスホール】が15世紀には常設のアセイオフィス金属鑑定所の本拠地となり、現在のホールマークの要素が定められました。

そこから【Hall Markホールマーク】という言葉が定着したと言われています。

イギリスでは今も厳格なホールマーク制度が守られている。

ライオンパサント 左向きのライオンのマーク は1822年から

長きに渡り、 イギリスの銀品位92.5%スターリングシルバーの証として 【ライオン】が使われます。

その歴史の中で、製造地によるスターリングシルバーのスタンダードマークは異なる時代もあり、ダブリンでは「ハープ」グラスゴーでは「アザミの花」使われたりしました。 

また、1697年~1720年 この期間だけは銀品位の基準がスターリングシルバーではなくブリタニアシルバー(銀純度95.84% 958.4/1000)が採用されます。

この期間は【ライオン】ではなく【ブリタニアの女神】が刻印されようになりました。   

(正直、この時代 18世紀以前(~1800年)のアンティークシルバーはなかなか流通することが少ないです。)

イギリス アンティークシルバーでよく見かけることができる銀品位を示すスタンダードマークは スターリングシルバーの証【ライオンパサント 左向きのライオン】です。

ライオンのマークが採用されたのは1544年ですが、当初は正面に顔が向いたマークでした。

顔が左向きのライオンパサントになったのは1822年となります。

19世紀前半からのイギリス銀食器は今でも市場に流通する量も多く、状態の良いアンティークシルバーも多いので人気が高いですね。

17世紀以前の銀食器の多くは世界大戦で武器に再利用された歴史があり、なかなか見かけることのできない貴重なアンティークスルバーとなります。

英国ホールマークの 標準的な刻印 

ホールマークの種類① 【メーカーズマーク】

様々なメーカーズマークは 無数にあります。

どの銀工房で製造されたのかが判別できるのが【メーカーズマーク】です。

もともとはシンボルマークなどが使われていたのですが、

1697年にはイニシャルの2文字を使うように制定されました。

メーカーズマークのいろいろ。

しかしながら、同じイニシャルを持つメーカーも多くフォントや文字を囲む枠の形状などを変えて区別されています。

【メーカーズマーク】こちらでも検索できます。

ホールマークの種類② 【スタンダードマーク】

素材の銀の純度を証明する刻印が【スタンダードマーク】です。

1822年からはスターリングシルバー(925/1000)には 「ライオンパサント」と呼ばれる左歩きのライオンの刻印が使われています。

イギリスの銀食器の中でスタンダードは スターリングシルバー(銀純度92.5%)ですが、

左「ライオンパサント」銀純度92.5%  右:「ブリタニアの女神」銀純度95.84%

1697年~1720年の期間は 「ブリタニアシルバー」と呼ばれる銀純度(95.84%)が使用されていたこともあります。

この時代は「ブリタニアの女神」が刻印されております。

左「ライオンパサント」・右「ブリタニアの女神」

いやー複雑ですね。。

このスタンダードマーク「ライオンパサント」が刻印されていれば、素材としてスターリングシルバーの価値も証明されますので、信頼できるお品と言えるでしょう。

ホールマークの種類③ 【アセイ・オフィスマーク】

イギリスに現存する4つのアセイ・オフィスのマーク。ロンドン・バーミンガム・シェフィールド・エディンバラ

イギリス国内の貴金属鑑定所(アセイ・オフィス)で公的な鑑定を受けたという証が【アセイ・オフィスマーク】です。

イギリス国内にかつては10数箇所のアセイ・オフィスがあり、場所毎に刻印が区別できるようになっております。

つまり製造産地を特定できるのが【アセイ・オフィスマーク】なのです。

イギリスのアセイオフィスの中心的存在。

一番歴史のあるアセイ・オフィスは1327年に認可されたロンドンの 「ゴールドスミスズカンパニー(The GOLDSMITHS’ Company)」になります。

現在は多くのアセイ・オフィスが閉鎖され、現在では「ロンドン」「エディンバラ」「バーミンガム」「シェフィールド」の4箇所のアセイ・オフィスが残っています。

◆LONDONロンドン ・・・・ レオパード(ヒョウの頭)

1327年にイギリス国内で初めて認可されたアセイ・オフィス。今でもアセイオフィスの基幹的役割です。

ロンドンのアセイ・オフィスマーク 【レオパード】いろいろ。

1497年~1822年まではヒョウの頭に王冠がありますが、1822年からのマークからは王冠なしのマークになります。

(1697~1720年は「ブリタニアシルバー(銀品位95.84%)が採用されていたので下のロンドンアセイオフィスマークになります)

ブリタニアシルバー期間のホールマーク(1700年)

◆BIRMINGHAMバーミンガム ・・・・・錨 いかり

バーミンガム 【錨いかり】のマーク

 

バーミンガムも1773年に設立された歴史有るアセイ・オフィスになります。

SHEFFIELDシェフィールド ・・・・王冠(~1975年) 薔薇(1975年~) 

1975年以前の「王冠」マークのほうがアンティークシルバーではよく見かけます。

SHEFFIELD シェフィールドは英国銀器を語る上で欠かせない銀器生産地です。日本でいうと燕三条のようなイメージでしょうか。

銀工房の集まった都市で、銀文化の発展共に栄えシェフィールドで多くの銀食器ブランドが創業されました。

EDINBURGHエディンバラ  ・・・城

エディンバラは他の3つのアセイオフィスに比較すると珍しい。

 エディンバラも15世紀からシルバーを鑑定してきた歴史を持つAssayOffice(アセイオフィス)のひとつです。

他には「CHESTERチェスター」「GLASGOWグラスゴー」「DUBLINダブリン」「NEWCASTLEニューカッスル」「EXETERエクスター」「YORKヨーク」「NORWICHノリッチ」のアッセイ・オフィスマークがありましたが、現在は閉鎖しております。

かつては10を超えるアセイオフィスがありました。

ホールマークの種類④ 【デートレター】

アセイオフィス毎に区別されており、この解読はガイドブックが必須です。

製造年を1年毎に区別し、何年に製造(刻印)されたのかが分かるのが【デートレター】マークです。

A~Zのアルファベットの文字体(大文字、小文字、飾り文字、筆記体などのフォントの変化)とその文字を囲む枠の形の区別でアセイ・オフィス毎にも区別されております。

その組み合わせは無数にあり、数百年にわたる銀食器の歴史を語るのが【デートレター】です。

ロンドンでは今も年毎のデートレターの刻印が続けられています。

アンティークシルバーの価値の一つである年代を証明する重要なマークとなります。

毎年その年のパンチは破壊される。厳正な管理をされています。

(ロンドン以外のアセイ・オフィスでは1999年代以降はこのデートレターは省略されています。)

デートレター】 こちらでも検索できます。

ホールマークの種類⑤ 【メタルファインネスマーク】

イギリスでは銀だけでなく金・プラチナ・パラジウム マークの基準があります。

銀の純度を示す 3文字の数字のマークが【メタルファインネスマーク】です。

イギリスの銀食器では、「ライオンパサント」がスターリングシルバーの証明にもあるため、この【メタルファインネスマークはマーク】が省略されることも多いです。

925はスターリングシルバー(銀品位92.5%)の証。

「925」のスターリングシルバーを示す数字は イギリス以外の銀器 ジュエリー全般で見かける事が多いホールマークではないでしょうか。

ホールマークの種類⑥ 【デューティーマーク】

Duty Markの例 左:ジョージ3世(右向き)1786年~1821年  右:ヴィクトリア女王 1838年~1890年

【ディーティーマーク】は1784年12月2日~1890年4月30日に製造された銀製品にのみ刻印されたホールマークとなります。

上記年代の銀製品には税金が課されており、税金を納めた証として 【デューティーマーク】が刻印されました。

その時代の国王の横顔の刻印が押されています。

一番右がジョージ三世(右向き)のDuty Mark
DUTY MARK デューティーマーク
  • ジョージ3世(左向き)   1784~1785
  • ジョージ3世(右向き)   1786~1821
  • ジョージ4世        1822~1833
  • ウィリアム4世       1834~1837
  • ヴィクトリア女王      1838~1890 

これは、なかなか見かけることの少ないホールマークだと思います。

ホールマークの種類⑦  【記念マーク】

一番右が記念マーク:1953年 エリザベス女王戴冠式記念

こちらも珍しい【ホールマーク】になります。

ジョージ5世英国王や エリザベス女王の戴冠式、銀婚式などのロイヤルイベントを祝うホールマークなどが、通常の【ホールマーク】に足して刻印される【記念ホールマーク】があります。

デートレターと合わせて その年だけに限定されるマークですので希少価値の高いホールマークになります。

記念マークの事例

【ホールマーク】はアンティークシルバーの醍醐味

今回は、イギリス銀器を語るに欠かせない【ホールマークHall Mark】についてご紹介してきました。

その歴史も深く、非常に奥深い【ホールマーク】の読解は、アンティークシルバーの大きな魅力の一つだと思います。

中世の貴族達が家の財産として受け継いできた【富と美の象徴】であった銀食器。

数百年を経てもなお、価値が認められ世界的にコレクターも多いアンティークシルバーは、そこに存在するだけで空間を上質に変えてくれます。

お家の時間を大切にしたい方に アンティークシルバー ぜひおすすめです!

ホールマークガイドブック】が1冊あると解読の助けになるはずです。

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この記事を書いた人

yn1173のアバター yn1173 飲食店店長

海好き&ビール大好き、湘南在住20年。最近ビール腹に悩みながらも、毎週末は海でデトックスする中年サーファー。ゆったりスローライフとアンティークに囲まれた生活を夢見ながら、スローな情報発信をさせていただきます。ブログ開始2021年7月の超初心者。ゆったり読んでいただければ幸いです。
サーフィン歴16年。 最近アンティーク銀器にはまり仏蘭西の銀器「クリストフル」が憧れ。

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